君のいない夏

昨年の9月27日に弊社の創業者である私の父が亡くなってから、もうすぐ一年になります。思い起こせば、今から40年ほど前に当時、町役場の職員だった父は、一念発起してその頃、黎明期を迎えていたケーブルテレビ事業を始めました。かつて一度だけ、父に起業した理由を尋ねたことがあります。当時、テレビ全盛の時代に地上アナログ放送を満足に受信できない地域も多かったため、そうした地域住民の皆様に安定した電波をお届けして快適にテレビ放送を楽しんでいただくため、また、途中で打ち切りになってしまうことも多かったプロ野球中継も最後まで存分に堪能していただきお客様に喜んでいただくため、そんな話をしていたことを思い出します。まさにサービス精神満載だなと感心させられたものです。弊社は今年で創業39年、私が入社して24年、社長に就任してから13年目を迎えます。その間、約四半世紀の月日を父と二人三脚で会社の発展のため、必死に仕事に取り組んできました。大変な事も多かったけれど、今思えば、父と共に過ごした日々は、かけがえのない充実した日々だったと思います。不器用だった父は、私の思い描いていた父親の理想像ではなかったけれど、世間知らずで生意気だった私に、何事も自由に挑戦させてくれた度量の深さに今は心から感謝しています。父が亡くなった後、今まで見えなかったけれど、生前、父がコツコツと取り組んでいた仕事の大切さに気付かされました。これから私は経営者として、事業を通じ、亡き父が生前、お世話になった多くの方々に私のできる方法で恩返しをしていきたいと思います。創業者の想いが詰まった大切な襷を次の世代につないでいけるよう、初心に立ち返り、今まで以上に精一杯、業務に邁進していこう―そんな想いを抱いている今日、この頃です。

亡き父へ

君がいなくなって初めての夏を迎えたよ。突然、亡くなってしまったから、一年が経とうとしている今でも、実感がなく、戸惑いもあるけれど、何とか会社を守っているから安心してね。もうすぐ8月になるね。新盆の法要には親族や親しい人が来るから楽しみにしていてね。たまに孫が淋しがって「じじ」の話をするよ。駆け足で訪れた別れに心の整理がつかないこともあるけれど、会社のみんなも家族も元気にやってるから、大丈夫だよ。

満足に親孝行も恩返しもできなくて申し訳ない気持ちでいっぱいだけど、その分、お父さんがお世話になった方々に僕が恩を返すから、許してね。今までお世話になり本当にありがとうございました。会社の発展と家族の幸せを天国から見守っていてください。さらばだ。

                                    関 俊之